続々と絶版になって姿を消そうとしている空冷エンジン
バイクを走らせることで、エンジンに発した熱を外気の空気を利用することで冷却するシステムを採用しているのが空冷エンジンです。
水冷エンジンと並ぶバイクのエンジンの代表格です。
しかし、近年になってこの空冷エンジンが続々と絶版になっており、市場から姿を消そうとしています。
空冷の単気筒エンジンを採用していたヤマハのSR400が生産終了したことで、いよいよ空冷エンジンの消滅が時間の問題になってきたと言われています。
とくに排気量が大きなバイクではほとんど見かけない状態になっており、ファンの間では嘆きの声も聞かれています。
小排気量のバイクではまだ空冷エンジンを採用しているモデルが見られますが、今後空冷エンジンが巻き返す可能性は極めて低いと言わざるを得ないでしょう。
絶版・生産終了が相次ぐ理由として挙げられるのが、空冷エンジンが抱えている問題点・デメリットです。
まず基本的な問題点として、水冷式に比べて冷却能力が落ちる点があります。
外気を利用してエンジンを冷やす仕組みのため、どうしても周囲の影響を受けやすい状況にあります。
例えば猛暑で外の空気では十分に冷やせない、あるいは渋滞などで走行中の風で冷やすのが難しい状況などでは、冷却効果が十分に発揮されないのです。
そうなれば、熱の上昇によってエンジンの故障リスクも高まってしまいます。
そしてもうひとつ、現代社会ならではの大きな問題点となっているのが環境への問題です。
安定して冷却効果を発揮できる水冷エンジンと比較して、空冷エンジンは上記のように外気の状況に影響されやすいため、エンジンの温度が安定しにくい難点を抱えています。
そのためガソリンが燃焼する温度も不安定になりやすく、燃焼温度が低い状態だと炭化水素の排出量が上昇してしまうなど、環境に負荷をかけてしまう恐れがあるのです。
近年になって排出ガス規制が厳しくなってきたことで、空冷エンジンでは対応できないケースも出てきています。
空冷エンジンならではの魅力とは?
このように空冷エンジンが市場から姿を消しつつある背景に時代の流れにうまく適応できていない面があるわけですが、一方でこのタイプのエンジンだからこその魅力もあります。
その中でもまず挙げられるのが、シンプルな構造です。
例えば冷却エンジンのように冷却水を通すための配管などもなく、冷却水やラジエーターもありません。
シンプルなので軽量、しかもメンテナンスがしやすいなど、扱いやすい面を備えているのです。
そしてもうひとつ、このシンプルな構造がもたらす外観の美しさがあります。
とくに空冷ファンの美しさに魅了されているバイク好きがたくさんいます。
シンプルだからこその機能美や、クラシックな雰囲気が大きな魅力となっています。
ほかにも、空冷ファンならではのエンジン音を評価する声も多く、多くのファンから市場から消えていくのを惜しむ声が上がっているのです。